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コラム

2025.04.26

犬猫の肺線維症

<原因>

肺線維症は、肺組織が線維化し、硬くなることで呼吸機能が低下する慢性疾患です。主に高齢の犬や猫で発症しやすく、一部の犬種では遺伝的な要因が関与することがあります。

主な原因は以下のとおりです:

  1. 慢性炎症
    気道や肺胞の長期的な炎症が線維化を引き起こします。
  2. 環境因子
    タバコの煙、ホコリ、化学物質の吸入が線維化のリスクを高めます。
  3. 感染症
    長引く細菌、ウイルス、真菌感染が肺組織を損傷し、線維化を促進します。
  4. 自己免疫疾患
    免疫系の異常により、自身の肺組織が攻撃されることがあります。
  5. 薬剤の副作用
    一部の薬物(例:抗がん剤や抗生物質)が肺組織に毒性を及ぼすことがあります。
  6. 遺伝的要因
    特定の犬種(例:ウェストハイランド・ホワイトテリア)は肺線維症のリスクが高いことが知られています。

<症状>

肺線維症の症状は徐々に進行し、以下のようなものが見られます:

  1. 呼吸困難
    息切れや浅く速い呼吸が特徴的です。

  2. 持続的な乾いた咳が発生します。
  3. 運動不耐性
    活動後に疲れやすく、息切れが顕著になります。
  4. チアノーゼ
    酸素不足により、歯茎や舌が青紫色になることがあります。
  5. 体重減少
    食欲不振やエネルギー消費増加により体重が減少します。
  6. 胸郭の拡張
    肺の機能低下により胸郭が広がったように見えることがあります。

<診断>

  1. 問診と身体検査
    症状や生活環境、既往歴を確認し、呼吸音を聴診します。肺線維症では肺の音が「捻髪音」と呼ばれる独特な音を発することがあります。
  2. 胸部X線検査
    肺の線維化を示す網状または斑状の影が確認されます。
  3. CT検査
    肺の線維化の範囲と重症度を詳細に評価します。
  4. 血液ガス分析
    血中の酸素と二酸化炭素の濃度を測定し、肺機能を評価します。
  5. 気管支洗浄液の分析(BAL)
    感染や炎症性細胞の存在を確認し、他の疾患との鑑別を行います。
  6. 肺生検
    必要に応じて、肺組織を採取し、病理学的に線維化の程度を確認します。

<治療>

肺線維症は根本的に治癒することは難しい疾患ですが、進行を遅らせ、症状を管理することが重要です。

  1. 環境管理
    • タバコの煙や刺激物の除去。
    • 温度と湿度を適切に保つ。
  2. 薬物療法
    • 抗炎症薬: ステロイドを使用し、肺の炎症を抑制します。
    • 免疫抑制剤: 自己免疫疾患が原因の場合に使用します。
    • 抗線維化薬: 線維化の進行を遅らせる効果が期待されます。
    • 利尿薬: 胸水が貯留している場合に用います。
  3. 酸素療法
    酸素濃縮器や酸素テントを使用し、動物が十分な酸素を吸入できるようにします。
  4. 栄養管理
    高エネルギー食を提供し、体重減少を防ぎます。
  5. リハビリテーション
    軽い運動を行うことで、筋力や体力を維持します。

<予防策>

  1. 環境管理
    刺激物やアレルゲンを避け、清潔な環境を保ちます。
  2. 定期的な健康診断
    初期段階での発見が重要です。咳や息切れが見られた場合は早期に診察を受けるようにします。
  3. 感染症予防
    ワクチン接種や感染症リスクのある場所を避けることで、肺の炎症を予防します。
  4. 適切な体重管理
    肥満は肺への負担を増加させるため、適切な体重を維持します。
  5. ストレス管理
    ストレスを減らし、安定した生活環境を提供します。

肺線維症は進行性の疾患であり、動物の生活の質(QOL)を維持するために継続的なケアが必要です。呼吸が苦しそうな場合や慢性的な咳が見られる場合は、早めに獣医師に相談してください。

お困りのことが御座いましたら、お気軽にご相談ください。

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PROFILE

稲野辺悠(夜の獣医師ゆってぃー)

港区動物救急医療センター芝アニマルクリニック院長
日本獣医救急集中治療学会所属

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