2025.04.26
犬猫の肺線維症
<原因>
肺線維症は、肺組織が線維化し、硬くなることで呼吸機能が低下する慢性疾患です。主に高齢の犬や猫で発症しやすく、一部の犬種では遺伝的な要因が関与することがあります。
主な原因は以下のとおりです:
- 慢性炎症
気道や肺胞の長期的な炎症が線維化を引き起こします。 - 環境因子
タバコの煙、ホコリ、化学物質の吸入が線維化のリスクを高めます。 - 感染症
長引く細菌、ウイルス、真菌感染が肺組織を損傷し、線維化を促進します。 - 自己免疫疾患
免疫系の異常により、自身の肺組織が攻撃されることがあります。 - 薬剤の副作用
一部の薬物(例:抗がん剤や抗生物質)が肺組織に毒性を及ぼすことがあります。 - 遺伝的要因
特定の犬種(例:ウェストハイランド・ホワイトテリア)は肺線維症のリスクが高いことが知られています。
<症状>

肺線維症の症状は徐々に進行し、以下のようなものが見られます:
- 呼吸困難
息切れや浅く速い呼吸が特徴的です。 - 咳
持続的な乾いた咳が発生します。 - 運動不耐性
活動後に疲れやすく、息切れが顕著になります。 - チアノーゼ
酸素不足により、歯茎や舌が青紫色になることがあります。 - 体重減少
食欲不振やエネルギー消費増加により体重が減少します。 - 胸郭の拡張
肺の機能低下により胸郭が広がったように見えることがあります。
<診断>

- 問診と身体検査
症状や生活環境、既往歴を確認し、呼吸音を聴診します。肺線維症では肺の音が「捻髪音」と呼ばれる独特な音を発することがあります。 - 胸部X線検査
肺の線維化を示す網状または斑状の影が確認されます。 - CT検査
肺の線維化の範囲と重症度を詳細に評価します。 - 血液ガス分析
血中の酸素と二酸化炭素の濃度を測定し、肺機能を評価します。 - 気管支洗浄液の分析(BAL)
感染や炎症性細胞の存在を確認し、他の疾患との鑑別を行います。 - 肺生検
必要に応じて、肺組織を採取し、病理学的に線維化の程度を確認します。
<治療>

肺線維症は根本的に治癒することは難しい疾患ですが、進行を遅らせ、症状を管理することが重要です。
- 環境管理
- タバコの煙や刺激物の除去。
- 温度と湿度を適切に保つ。
- 薬物療法
- 抗炎症薬: ステロイドを使用し、肺の炎症を抑制します。
- 免疫抑制剤: 自己免疫疾患が原因の場合に使用します。
- 抗線維化薬: 線維化の進行を遅らせる効果が期待されます。
- 利尿薬: 胸水が貯留している場合に用います。
- 酸素療法
酸素濃縮器や酸素テントを使用し、動物が十分な酸素を吸入できるようにします。 - 栄養管理
高エネルギー食を提供し、体重減少を防ぎます。 - リハビリテーション
軽い運動を行うことで、筋力や体力を維持します。
<予防策>
- 環境管理
刺激物やアレルゲンを避け、清潔な環境を保ちます。 - 定期的な健康診断
初期段階での発見が重要です。咳や息切れが見られた場合は早期に診察を受けるようにします。 - 感染症予防
ワクチン接種や感染症リスクのある場所を避けることで、肺の炎症を予防します。 - 適切な体重管理
肥満は肺への負担を増加させるため、適切な体重を維持します。 - ストレス管理
ストレスを減らし、安定した生活環境を提供します。
肺線維症は進行性の疾患であり、動物の生活の質(QOL)を維持するために継続的なケアが必要です。呼吸が苦しそうな場合や慢性的な咳が見られる場合は、早めに獣医師に相談してください。
お困りのことが御座いましたら、お気軽にご相談ください。
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PROFILE

稲野辺悠(夜の獣医師ゆってぃー)
港区動物救急医療センター芝アニマルクリニック院長
日本獣医救急集中治療学会所属