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コラム

2025.08.05

犬猫の不整脈

<原因>

不整脈とは、心臓の拍動が通常のリズムから外れる状態を指します。心臓は正常な場合、一定のリズムで拍動を繰り返しますが、不整脈のある動物ではそのリズムが不規則になり、拍動が異常に遅く(徐脈)あるいは早く(頻脈)なります。不整脈は犬や猫の心臓においても見られることがあり、生命に関わることもあります。原因はさまざまで、いくつかの疾患や状態が影響を与えることがあります。

  1. 心筋疾患 心筋の異常が原因で不整脈が発生することがあります。心筋症(特に拡張型心筋症)や肥大型心筋症などが代表的で、これらは心臓の構造や機能に影響を与え、正常な電気的活動を妨げることがあります。
  2. 心臓の電気系の異常 心臓は電気的な信号によって拍動を制御しています。この信号の伝達が乱れると、リズムが乱れる不整脈が発生します。心房細動(AF)、心室頻拍、心房性期外収縮などがこれに該当します。
  3. 電解質異常 電解質、特にカリウム、カルシウム、ナトリウムなどの不均衡が原因となり、心臓の電気的活動に影響を与えて不整脈が発生することがあります。例えば、腎不全や内分泌疾患(甲状腺機能亢進症、アジソン病など)が原因で電解質異常を引き起こすことがあります。
  4. 過剰なストレスや刺激 強いストレスや激しい運動、突然の興奮状態も不整脈を引き起こすことがあります。特に猫や小型犬はストレスに敏感で、急激な体温の変化や騒音がトリガーとなることがあります。
  5. 薬剤や毒物の影響 一部の薬剤や毒物が心臓の電気系統に影響を与え、不整脈を引き起こすことがあります。例えば、心臓病の治療薬や鎮痛剤が原因となることがあります。
  6. 遺伝的要因 特定の犬種では、遺伝的に不整脈が発症しやすいことがあります。特にドーベルマン、サモエド、ゴールデン・レトリバーなどは心臓疾患を伴う不整脈のリスクが高いとされています。

<症状>

不整脈の症状は、その種類や重症度に応じて異なります。軽度の不整脈では無症状のこともありますが、以下のような症状が現れることがあります:

  • 呼吸困難(息切れ、過呼吸)
  • 運動不耐性(疲れやすい、運動後に動けなくなる)
  • 食欲不振(食事の摂取量が減少する)
  • 失神(意識喪失やふらつき)
  • 不規則な心拍(ペースメーカーが正常に働かず、リズムが乱れる)
  • 脈拍の異常(脈拍が速すぎたり、遅すぎたりする)

症状が進行すると、重篤な状態に陥ることがあり、命に関わることもあります。特に、頻繁に発作を繰り返す不整脈や心室性の不整脈は、早期の診断と治療が不可欠です。

<診断>

不整脈の診断には、以下の方法が用いられます:

  • 心電図(ECG/EKG):心臓の電気的活動を記録し、不整脈の種類や発生部位を特定します。
  • エコー心電図(超音波):心臓の構造や血流の状態を確認し、心筋の異常や弁の問題を評価します。
  • 24時間ホルター心電図:持続的に心電図を記録することで、日常的なリズムの乱れを把握します。

<治療法>

不整脈の治療は、その原因と症状に応じて異なります。治療法には以下のような方法があります:

  1. 薬物療法 不整脈の治療薬(抗不整脈薬)は、心臓のリズムを正常に保つために使用されます。ベラパミルやアミオダロンなどの薬剤が使われることがあります。
  2. ペースメーカーの設置 徐脈(心拍が遅すぎる)や心房細動などの場合、ペースメーカーを埋め込むことで心臓のリズムを安定させることができます。
  3. カテーテルアブレーション 重度の不整脈に対しては、カテーテルアブレーションという方法を用いて、異常な電気信号を発生させる部分を焼灼(アブレーション)することがあります。
  4. 外科的手術 重篤な心臓疾患による不整脈が原因であれば、外科的に心臓の修復や弁の置換手術が行われることもあります。

<予後>

不整脈の予後はその種類や原因によります。適切な治療を受けた場合、多くの動物は安定した生活を送ることができますが、治療が遅れると心不全や突然死のリスクが高まります。定期的な検診と心臓の健康を守る生活環境が大切です。

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PROFILE

稲野辺悠(夜の獣医師ゆってぃー)

港区動物救急医療センター芝アニマルクリニック院長
日本獣医救急集中治療学会所属

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