2025.08.16
犬猫のアルカロイドを含む植物の中毒
<原因>
アルカロイドは、多くの植物に自然に含まれる有毒な化学物質であり、動物に摂取されると神経系や消化器系に深刻な影響を及ぼすことがあります。アルカロイドを含む植物は非常に多岐にわたりますが、特に代表的なものには次のような植物があります。
- トマトの葉や茎(ナス科植物)
- ジャガイモの芽や皮(ナス科植物)
- アヘンポピー(アヘンアルカロイド)
- キツネノマゴ(コニンアルカロイド)
- クスノキ科植物(例:マツの木)、カナビス(カンナビスアルカロイド)
- ニワトリトウモロコシ(アルカロイド類の一部)
これらの植物には、摂取すると神経系に作用し、行動の変化や臓器障害を引き起こす可能性があるアルカロイドが含まれています。アルカロイド中毒は、犬や猫、ウサギ、家畜などさまざまな動物に影響を及ぼすことがあります。
<症状>

アルカロイドを含む植物を摂取した場合、動物は次のような中毒症状を示すことがあります:
- 神経系への影響
- 震え、痙攣、けいれん
- 不安定な歩行、筋肉の麻痺や弱化
- 方向感覚の喪失、異常な反応
- 呼吸困難、過呼吸または呼吸停止
- 消化器系への影響
- 嘔吐、下痢
- 食欲不振、口の中の異常
- 腹痛や胃の膨満感
- 循環器系への影響
- 心拍数の異常(速くまたは遅く)
- 血圧の急激な変化
- 浮腫やむくみ
- その他の症状
- 意識の喪失や昏睡状態
- 発汗や皮膚の異常反応
- 目の充血、流涙
アルカロイドによる中毒は急性であることが多く、症状が急速に進行します。最悪の場合、呼吸不全や心停止を引き起こし、命に関わる危険もあります。
<診断>

アルカロイド中毒の診断は、摂取した植物の種類を確認することが重要です。診断には以下の方法が用いられます:
- 問診:摂取した植物やその他の潜在的な毒素の特定。
- 血液検査:毒素の影響を受けている臓器の状態をチェックします(特に肝臓や腎臓の機能を確認)。
- 尿検査:アルカロイドやそれらの代謝産物を検出するために用いられます。
- 神経学的評価:動物の行動や運動能力を評価して神経系の異常を検出します。
これらの検査によってアルカロイド中毒の確定診断が行われます。
<治療>

アルカロイド中毒に対する治療は、早期の発見が非常に重要です。治療方法としては以下のものが考慮されます:
- 早急な除去:摂取から時間が経過していなければ、吐かせる、または胃洗浄を行うことで植物の成分を体内から排出させることが試みられます。
- 活性炭の投与:吸着剤としての役割を果たし、体内に残った毒素を吸収して排出を助けます。
- 点滴療法:体液の補充や解毒を助けるために点滴が行われることがあります。
- 対症療法:神経症状や消化器症状が出ている場合、薬物による症状緩和を行います。抗痙攣薬や鎮痛薬などが使用されることがあります。
- 緊急処置:深刻な症状(呼吸困難や循環不全など)には、酸素投与や心臓マッサージなどの緊急対応が行われることもあります。
中毒が進行する前に迅速な対応を行うことが回復の鍵となります。
<予防>
- 植物の管理:アルカロイドを含む植物を飼っている動物の手が届かない場所に保管し、誤って摂取しないように注意します。
- 教育:飼い主が有毒植物を認識し、家庭内や庭での危険を避けることが重要です。
- 獣医師への定期的な相談:植物中毒のリスクについて、特に家庭や庭で使用する植物について獣医師に相談することが役立ちます。
アルカロイドを含む植物の摂取は避け、動物の健康と安全を守ることが最も重要です。
お困りのことが御座いましたら、お気軽にご相談ください。
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PROFILE

稲野辺悠(夜の獣医師ゆってぃー)
港区動物救急医療センター芝アニマルクリニック院長
日本獣医救急集中治療学会所属