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コラム

2025.04.19

犬猫の肺高血圧症

<原因>

肺高血圧症は、肺動脈の血圧が異常に高くなる疾患で、肺循環や心臓に大きな負担をかけます。この疾患は原因により一次性(特発性)と二次性(他の疾患による)に分類されます。

  1. 一次性肺高血圧症(特発性)
    原因不明の肺動脈の異常収縮や肥厚によって発症します。
  2. 二次性肺高血圧症
    他の疾患が引き金となって発症することが一般的です:
    • 心疾患: 僧帽弁閉鎖不全症や心臓病による血液の逆流が肺動脈に負担をかけます。
    • 慢性呼吸器疾患: 慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症、または長期的な低酸素状態が原因となる場合があります。
    • 肺血栓塞栓症: 血栓が肺動脈を塞ぐことで圧力が上昇します。
    • 低酸素症: 高地での生活や慢性的な肺疾患による酸素不足が誘因となります。
  3. その他の原因
    • 肥満
    • アナフィラキシーやアレルギー反応
    • 寄生虫(犬糸状虫症など)

<症状>

肺高血圧症の症状は進行性であり、以下のようなものが一般的です:

  1. 運動不耐性
    疲れやすく、軽い運動でも息切れします。
  2. 呼吸困難
    特に運動後や休息中に見られ、進行すると常時呼吸が苦しくなることがあります。

  3. 持続的な乾いた咳が発生する場合があります。
  4. 失神
    血液供給の不足により、意識を失うことがあります。
  5. チアノーゼ
    酸素不足によって舌や歯茎が青紫色になります。
  6. 腹水・胸水
    血液循環の異常により、胸腔や腹腔に液体が貯留します。
  7. 体重減少
    長期的なエネルギー消費増加による体重減少が見られます。

<診断>

  1. 問診と身体検査
    呼吸困難や疲労の程度、咳の有無などを詳しく確認します。また、チアノーゼや胸水の有無を視診や触診で評価します。
  2. 胸部X線検査
    肺動脈の拡張や心臓の右心室の肥大が確認される場合があります。
  3. 心エコー検査(超音波検査)
    肺動脈圧の推定や心臓の機能評価に最も有用です。
  4. 血液検査
    酸素レベル、赤血球数、または寄生虫感染の有無を評価します。
  5. CTまたはMRI検査
    肺の構造的な異常や血栓の存在を詳しく調べます。
  6. 心臓カテーテル検査
    肺動脈の血圧を直接測定するゴールドスタンダードの検査です。

<治療>

肺高血圧症の治療は原因の特定とその管理に焦点を当てます。

  1. 薬物療法
    • 血管拡張薬: 肺動脈の血管を拡張し、血流を改善します。
    • 利尿薬: 胸水や腹水の軽減を目的に使用されます。
    • 酸素療法: 低酸素状態を改善し、心臓や肺への負担を軽減します。
    • 抗凝固薬: 血栓の予防または治療のために使用されます。
    • 心不全治療薬: 心臓の負担を軽減する薬剤が処方されることがあります。
  2. 生活管理
    • 激しい運動を避け、適度な安静を保つ。
    • ストレスを減らし、安定した生活環境を提供する。
  3. 外科的治療
    肺血栓が原因の場合、血栓除去術が必要となる場合があります。
  4. 基礎疾患の治療
    心疾患や慢性呼吸器疾患がある場合、その治療が優先されます。

<予防策>

  1. 健康診断
    定期的な診察と検査により、初期の異常を発見することが重要です。
  2. 感染症予防
    犬糸状虫症の予防薬を適切に使用し、寄生虫感染を防ぎます。
  3. 環境管理
    刺激物やタバコの煙を避け、清潔な環境を維持します。
  4. 適正な運動
    無理のない範囲での運動を推奨し、肥満を予防します。
  5. 酸素供給の確保
    慢性低酸素症のリスクがある場合は、酸素濃縮器を使用するなどの対策を講じます。

肺高血圧症は早期の診断と適切な管理が重要な疾患です。呼吸が苦しそうな場合や運動不耐性が見られる場合は、早めに獣医師に相談してください。

お困りのことが御座いましたら、お気軽にご相談ください。

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PROFILE

稲野辺悠(夜の獣医師ゆってぃー)

港区動物救急医療センター芝アニマルクリニック院長
日本獣医救急集中治療学会所属

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