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コラム

2024.06.11

犬の慢性腎臓病

犬の慢性腎臓病とは

腎臓はワンちゃんの体の中で、
・血液から尿をつくり体の中で不要になった老廃物や毒素を尿の中に排泄する
・血圧を調節する
・ナトリウムやカリウムなどの血液中のイオンバランスをたもつ
・ホルモンを分泌し血液(赤血球)をつくる

などの働きを担っている臓器です。
腎臓がダメージを受けて十分に機能しなくなる状態を「腎不全」といいます。
これが長期間続くと慢性腎臓病(慢性腎不全)と診断されます。
また、高齢になるほど、慢性腎臓病(慢性腎不全)になるリスクは高くなります。
さらに、国際獣医腎臓病研究グループによると以下の品種は特にリスクが高いといわれています。
・ブルテリア
・イングリッシュコッカースパニエル
・キャバリア、ウェストハイランドホワイトテリア
・ボクサー
・シャーペイ

初期には多飲多尿(水をたくさん飲み、尿量が増え、尿の色が薄くなる)など、尿そのものに関連した変化がみられます。
進行すると食欲不振や体重減少、嘔吐、けいれん発作など、全身的な症状を示すようになります。

犬の慢性腎臓病の原因

慢性腎臓病(慢性腎不全)は以下のようなさまざま原因により起こります。
・細菌やウイルスの感染による腎炎
・外傷
・薬物などによる中毒
・心筋症やショックなどによる腎血流量の低下
・免疫疾患などによる腎炎
・結晶や結石などによる尿路の閉塞

犬の慢性腎臓病では、腎臓の中の糸球体と呼ばれる部分に障害が起きることが比較的多いとされています。
遺伝的な要因や免疫系の異常により糸球体が障害を受けることによって、腎機能が低下し、おしっこを上手く作れなくなることで体の中に老廃物が蓄積されやすくなります。

犬の慢性腎臓病のステージ分類

IRIS(国際獣医腎臓病研究グループ)が推奨しているステージ分類を行うことによって治療の方針を決定します。

ステージ分類は、血液検査によるCRE(クレアチニン)やSDMAの値、尿の状態、血圧の数値などを参考に行います。
一度の検査だけでなく、定期的に検査を繰り返して病状を正確に把握することが大切になります。

ステージ1

症状は全くみられず、血液検査でも異常値は見つかりません。
尿検査で尿比重の低下や蛋白尿、腎臓の形状の異常が認められることがあります。

ステージ2

慢性腎臓病で最初に見られる症状である「多飲多尿」が起きるようになります。
腎機能が低下してくると尿を濃縮できなくなるため、薄い尿を大量にするようになります。
そのため水分不足になり、水をたくさん飲むようになります。

このステージでは、まだほとんどの子で元気・食欲が普通にあり、なかなか異常に気付かないことがあります。
しかし、腎機能は正常の4分の1にまで低下しています。

この段階では体調維持に必要な腎機能が残っており、再生医療により腎機能低下の進行を抑える効果が期待できます。

ステージ3

さらに腎機能の低下が進むと、老廃物などの有害物質を尿中に十分排泄することが出来なくなるため、尿毒症を発症し始めます。
血液中で高濃度になった有害物質により、口腔粘膜や胃粘膜が荒れて、口内炎や胃炎になりやすくなります。
食欲の低下や嘔吐などの症状が表れ始めます。
加えて、血液検査で腎機能の指標となる数値である、CRE(クレアチニン)、BUN(尿素窒素)の上昇がみられるようになります。
CREやBUNは、本来は腎臓から排泄される老廃物ですが、腎機能の低下により尿中に排泄することが出来なくなってしまうため、血中の濃度が上昇します。
また、腎臓は赤血球の成熟に必要なエリスロポエチンというホルモンを分泌しています。
慢性腎臓病になるとエリスロポエチンを正常に分泌することが出来なくなるため、貧血が起きることもあります。

この段階では生命維持に必要な腎機能が残っているため、再生医療により慢性腎臓病の進行を遅らせ、QOL(生活の質)の維持・改善が期待できます。

ステージ4

重篤な臨床症状がみられる時期です。
尿毒症がさらに進行し、積極的な治療なしでは生命維持が困難になります。

犬の慢性腎臓病の治療

慢性腎臓病により一度壊されてしまった腎臓の組織が、治療により回復することはありません。
そのため、慢性腎臓病の治療では、血液中の老廃物や毒素を体内に貯めないようにすること、そして、慢性腎臓病の進行を緩やかにすることが重要となります。

具体的には点滴や積極的に水分を補給することにより、脱水を予防したり、体内の水分量を増加させて尿量を増やし、老廃物の排泄を促したりします。
また、腎臓の負担を軽減させるための食事療法や薬物療法などを行います。
設備のある病院では腹膜透析や血液透析を行い、老廃物の排出を促すこともあります。

犬の慢性腎臓病の食事など

尿毒症を引き起こす老廃物を体に貯まりにくくするために、タンパク質・ナトリウム・リン等を制限した食事や、同様の効果が期待されるサプリメント等を与えることがあります。
例えば、動物病院で扱う腎臓病用の特別療法食や、腸内のタンパク質・リンなどを吸着することで排泄を促進するサプリメント等があります。
腎臓病の療法食はワンちゃんには好まれないことも多く、食べつきが悪いことがあるかもしれません。
その場合はジャガイモやサツマイモなど、ワンちゃんの好きなものを少しだけ混ぜてあげると食べてくれることもあります。
ただし、ササミやお魚のようなお肉類(タンパク質)は、与えすぎると尿毒症の原因になる可能性があるので、トッピングとして使う際は少量のみにとどめるようにしましょう。
給餌方法や量などについては、かかりつけの獣医師にご相談ください。

お困りのことが御座いましたら、お気軽にご相談ください。

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PROFILE

稲野辺悠(夜の獣医師ゆってぃー)

港区動物救急医療センター芝アニマルクリニック院長
日本獣医救急集中治療学会所属

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