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コラム

2025.09.17

犬の動脈管開存症

<原因>

動脈管開存症(PDA)は、出生時に動脈管が適切に閉じないことで発生する先天的な心血管疾患です。動脈管は胎児の循環系で重要な役割を果たしており、母体と胎児の間で酸素と栄養素を交換する血液の流れを確保していますが、通常は生後数日以内に自然に閉じます。しかし、動脈管が開いたままであると、血液が異常に循環し、心臓に過剰な負担がかかります。

主な原因とリスク因子には以下が含まれます:

  1. 遺伝的要因 動脈管開存症は遺伝的な要因が関与することがあり、特定の犬種で発症率が高いことが知られています。特に、コリー、ポメラニアン、ダックスフント、チワワ、ボストン・テリアなどの小型犬に多く見られます。
  2. 胎児の発育不全 妊娠中の母犬の健康状態や栄養状態が、胎児の循環系の発達に影響を与える可能性があります。例えば、妊娠中に感染症や栄養不足があると、動脈管が適切に閉じないリスクが高くなります。
  3. ホルモン異常 一部のホルモン異常が動脈管開存症の発症に関与していると考えられています。特に、甲状腺ホルモンの異常が影響を与える可能性があります。
  4. 環境要因 犬が育った環境において、特定の毒素や感染症などが動脈管開存症の発症に関与していることもあります。例えば、特定の薬剤や化学物質への暴露がリスクを増加させる場合があります。

<症状>

動脈管開存症の症状は犬の年齢や疾患の重症度によって異なりますが、以下のような症状が見られることがあります:

  1. 運動不耐性 動脈管が開いたままだと心臓に負担がかかり、犬は疲れやすくなることがあります。散歩や運動後に息切れや疲労を感じることが多くなります。
  2. 心臓が過剰に働くため、肺に血液がうっ滞し、咳が発生することがあります。特に運動後や興奮した際に顕著です。
  3. 呼吸困難 心臓への負担が増すことにより、呼吸が浅く速くなる場合があります。これは進行した場合に見られる症状です。
  4. 成長の遅れ 特に子犬においては、動脈管開存症が未治療である場合、正常な体重増加や発育が見られないことがあります。
  5. チアノーゼ(青紫色の舌や歯茎) 血液の酸素供給が不十分になることから、舌や歯茎が青紫色になることがあります。これは重篤な状態を示しています。
  6. 心雑音 獣医による聴診で心臓の異常な音(心雑音)が聞こえることがあります。動脈管開存症の犬の多くは、心雑音が確認されることがあります。

<診断>

動脈管開存症は、通常、聴診で心雑音が確認された場合に疑われますが、確定診断には以下の検査が必要です:

  1. 胸部X線検査 心臓の大きさや肺の状態を評価するために行われます。動脈管開存症が進行すると、心臓が拡大し、肺に液体がたまることがあります。
  2. 超音波検査(心エコー) 動脈管が開いているかを直接確認するために使用される最も確実な診断法です。心臓の構造を詳細に観察することができます。
  3. 血圧測定 動脈管開存症が進行すると血圧が異常になることがあります。高血圧や低血圧が確認されることがあります。

<治療>

動脈管開存症の治療は、犬の年齢や疾患の進行度に応じて異なります。治療方法は以下の通りです:

  1. 外科手術 動脈管開存症の治療法として最も一般的なのは、外科的手術です。動脈管を閉じるために、胸部の開胸手術を行います。この手術は成功率が高く、早期に治療を受けることが重要です。
  2. カテーテル治療 外科手術が難しい場合、カテーテルを使用して動脈管を閉じる方法もあります。カテーテルを使った治療は、手術よりも侵襲が少なく、回復が早いという利点があります。
  3. 薬物治療 手術を行う前に、症状を緩和するために薬物治療を行うことがあります。例えば、心臓の負担を軽減する薬や、咳を抑える薬が使用されることがあります。

<予後>

動脈管開存症の予後は、早期に治療を受けた場合、非常に良好です。外科手術後の回復は順調で、ほとんどの犬は正常な生活を取り戻します。しかし、治療を受けずに放置した場合、心不全や肺水腫などの重篤な合併症を引き起こす可能性があり、生命の危険が高まります。

動脈管開存症は早期に発見し、適切に治療することで、犬の寿命や生活の質を大きく改善できる疾患です。

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PROFILE

稲野辺悠(夜の獣医師ゆってぃー)

港区動物救急医療センター芝アニマルクリニック院長
日本獣医救急集中治療学会所属

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