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コラム

2025.06.20

心嚢水貯留(心タンポナーデ)

<原因>

心嚢水貯留(心タンポナーデ)は、心臓を包んでいる膜(心嚢)の中に過剰な液体が溜まり、心臓の正常な動きを妨げる状態です。液体が溜まることにより、心臓の拡張や収縮が制限され、血液の流れに障害が生じます。心タンポナーデは急激に進行することが多く、早期の診断と治療が必要です。

心嚢水貯留の原因にはさまざまなものがあり、以下のようなものが主な要因として挙げられます:

  1. 外傷や事故 交通事故や落下、衝撃などの外的要因による心臓の外傷が原因で、血液や他の体液が心嚢内に漏れ出すことがあります。これにより、心臓の周りに液体が溜まり、圧力が増加します。
  2. 心臓疾患 心疾患、特に心臓の腫瘍や心膜炎(心膜の炎症)が心嚢水貯留を引き起こすことがあります。心臓が正常に機能しない場合、心嚢内に液体が溜まりやすくなります。
  3. 感染症 感染症が原因で心膜が炎症を起こし、その結果として心嚢内に液体が溜まることがあります。特に細菌や真菌、ウイルスなどによる感染が関与することが多いです。
  4. 心臓の腫瘍 心臓内の腫瘍が発生すると、心嚢内に血液や液体が漏れ出すことがあります。腫瘍は心膜に浸潤し、液体が溜まる原因となります。
  5. 腎不全 腎不全や体液の不均衡が心嚢水貯留を引き起こすことがあります。体内で液体が正常に処理されない場合、異常に液体が貯留し、心嚢内に蓄積されることがあります。

<症状>

犬の心タンポナーデの症状は、液体の貯留量や進行の速度により異なりますが、一般的な症状には以下のようなものがあります:

  1. 呼吸困難 心嚢内の液体が増加すると、心臓が膨張できず、肺への血流が不足します。これにより、犬は呼吸困難を感じ、呼吸数が増加します。
  2. 虚脱や元気のなさ 心臓が十分に血液を送り出せなくなるため、犬は元気を失い、活動的でなくなることがあります。運動後の過度の疲れや虚脱が見られることもあります。
  3. 食欲不振 心臓の圧迫や、体内の酸素供給不足により、犬は食欲を失うことがあります。
  4. 浮腫(むくみ) 血液循環が不十分になることで、足や腹部にむくみが現れることがあります。これは液体が血管から漏れ、体内に蓄積するためです。
  5. 急激な衰弱 心嚢水貯留が急激に進行すると、犬は急激な衰弱やショック状態に陥ることがあります。特に心膜炎や腫瘍が原因の場合、急速に症状が悪化することがあります。

<診断>

心タンポナーデの診断には、以下の方法が用いられます:

  1. 聴診 獣医師は、犬の心音を聴診器で聴取します。液体が心嚢内に溜まると、心音が鈍くなることがあります。
  2. X線検査 胸部X線を使用して、心臓のサイズや形状、心嚢内に液体が溜まっているかどうかを確認します。液体の貯留があると、心臓の輪郭が異常になります。
  3. 超音波検査(エコー) 心臓の超音波検査は、心嚢水貯留を確認するための最も効果的な方法です。超音波により、心嚢内の液体の量や心臓の圧迫状態を詳細に評価することができます。
  4. 血液検査 血液検査では、腎機能や心臓の健康状態を確認し、心タンポナーデの原因となる可能性のある疾患を特定します。

<治療>

心タンポナーデの治療には、原因によって異なるアプローチが必要です:

  1. 穿刺と排液 心嚢に溜まった液体を排出するため、針を使って心嚢に穿刺を行い、液体を取り除きます。これにより、心臓の圧迫が軽減し、血液循環が改善されます。
  2. 薬物治療 体液の貯留を防ぐために利尿剤が使用されることがあります。また、心臓疾患が原因の場合、心臓の機能をサポートする薬剤が処方されることもあります。
  3. 手術 心嚢内に溜まる液体の原因が腫瘍や感染症である場合、その治療が必要です。手術を行い、腫瘍や炎症源を取り除くことがあります。
  4. 支持療法 ショック状態にある犬には、酸素療法や点滴が行われることがあります。これにより、心臓や他の臓器の機能をサポートします。

<予防>

心嚢水貯留の予防には、心疾患や外傷などの原因を早期に発見し、適切に管理することが重要です。定期的な健康診断と、事故や外的な衝撃を避けることが、予防に役立ちます。また、心臓に関する病気の兆候を早期に発見することで、重症化を防ぐことができます。

<まとめ>

犬の心嚢水貯留(心タンポナーデ)は、心臓の圧迫や血液循環の障害を引き起こす危険な状態です。迅速な診断と適切な治療が必要で、外傷や心疾患が原因となることが多いため、予防と早期発見が重要です。治療方法には液体の排除、薬物療法、手術などがあり、犬の健康を守るために適切な対応が求められます。

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PROFILE

稲野辺悠(夜の獣医師ゆってぃー)

港区動物救急医療センター芝アニマルクリニック院長
日本獣医救急集中治療学会所属

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