営業時間を確認する

column

コラム

2025.02.12

気管虚脱

<原因>

気管虚脱は、気管の壁が弱くなり、正常な形状を保てなくなり、気道が閉塞または狭窄する状態です。特に小型犬や猫でよく見られます。気管は通常、軟骨によって支えられており、この軟骨が弱くなることで気管が潰れてしまいます。

主な原因としては以下が挙げられます:

  1. 遺伝的要因
    小型犬種(特にチワワ、ヨークシャーテリア、ポメラニアンなど)で遺伝的に軟骨が弱く、気管虚脱が発生しやすいことがあります。
  2. 加齢
    年齢が進むにつれて気管の軟骨が劣化し、虚脱が進行することがあります。
  3. 肥満
    過剰な体重が気道に圧力をかけ、気管を圧迫することで虚脱を引き起こすことがあります。
  4. 慢性咳嗽
    慢性的な咳や呼吸器疾患(例えば、気管支炎や肺炎など)が原因で気管が弱くなることがあります。
  5. 外傷や手術
    頸部や胸部の外傷、または手術後に気管が損傷を受けることで虚脱が発生する場合があります。
  6. 感染症
    呼吸器感染症が引き金となり、気管の軟骨を弱め、虚脱を引き起こすことがあります。

<症状>

気管虚脱の症状は段階的に進行することが多く、初期段階では軽度の症状が見られますが、進行すると重篤な症状を引き起こします。以下の症状が見られます

  1. 乾いた咳
    特に興奮時や運動後に乾いた咳をすることが一般的です。この咳は「ゴホンゴホン」といった特徴的な音を伴うことがあります。
  2. 呼吸困難
    気管が狭くなることで、呼吸がしづらくなり、苦しそうな呼吸をすることがあります。
  3. 嘔吐
    咳がひどくなると、嘔吐を引き起こすことがあります。
  4. 疲れやすさ
    運動や遊びをした後にすぐに疲れ、休息が必要になることがあります。
  5. 舌の色の変化
    酸素不足が進行すると、舌や歯茎が青紫色になることがあります(チアノーゼ)。
  6. 喘鳴(ぜんめい)
    呼吸時に「ヒューヒュー」や「ゼーゼー」といった音が聞こえることがあります。

<診断>

気管虚脱の診断には、以下の方法が用いられます

  1. 問診と身体検査
    咳や呼吸の異常について飼い主から詳細に聞き取り、呼吸の状態を視診および触診で評価します。
  2. X線検査(胸部レントゲン)
    胸部X線検査を行うことで、気管がどの程度虚脱しているかを確認します。通常、咳や呼吸困難が見られる場合、X線で気管の狭窄や不整形が確認されます。
  3. 内視鏡検査
    内視鏡を用いて気管内部を直接観察し、虚脱の程度や損傷の有無を確認します。この検査は、症状が重度の場合に行われることが多いです。
  4. 気管支鏡検査
    気管支鏡を使って気管の状況を直接確認し、狭窄や閉塞の箇所を詳細に評価します。

<治療>

気管虚脱の治療は、症状の進行具合や原因に応じて異なります。主な治療方法は以下の通りです

  1. 薬物療法
    • 気管拡張薬: 気道を広げて呼吸を楽にする薬剤が処方されることがあります。
    • 鎮咳薬: 咳を軽減する薬剤が使用されることがありますが、過度に咳を抑えることは、症状を悪化させる可能性があるため、慎重に使用されます。
    • 抗炎症薬: 呼吸器の炎症を抑えるために、ステロイドや抗炎症薬が使用されることがあります。
  2. 体重管理
    肥満が原因となっている場合、減量することが重要です。適切な体重を維持することで気管への圧力を減少させます。
  3. 酸素療法
    酸素濃度を保つために酸素療法が行われる場合があります。酸素を補充することで、酸素不足による症状の軽減が期待されます。
  4. 外科的治療
    重度の気管虚脱では、気管ステントを設置する手術が行われることがあります。ステントにより気管が広がり、呼吸を楽にすることができます。
  5. 生活環境の改善
    乾燥した空気や煙を避けるため、室内の湿度を調整したり、環境中の刺激物(煙や化学物質)を排除することが推奨されます。

<予防策>

気管虚脱は遺伝的な要因や加齢によって引き起こされることが多いため、完全に予防することは難しいですが、以下の点に注意することが予防に繋がります:

  1. 肥満の予防
    健康的な体重を維持することが重要です。過度の体重増加を防ぎ、適切な食事と運動を心がけます。
  2. 禁煙と環境管理
    喫煙環境を避けることが重要です。煙や化学物質が呼吸器に悪影響を与えるため、清潔で風通しの良い環境を提供しましょう。
  3. 定期的な健康診断
    定期的に動物病院で健康チェックを行い、早期に気管虚脱の兆候を発見することが重要です。
  4. 適切な運動
    過度な運動を避け、飼い主が指導する適度な運動を行うことが推奨されます。

気管虚脱は適切な治療を行うことで症状の改善が期待できますが、早期発見と管理が重要です。呼吸に異常が見られる場合は、速やかに獣医師に相談することが推奨されます。

お困りのことが御座いましたら、お気軽にご相談ください。

◆youtube:https://www.youtube.com/@vetsyutty

◆tiktok:https://www.tiktok.com/@nolimitvet_yutty

◆instagram:https://www.instagram.com/yinanobe/

24時間問い合わせはこちらから

公式LINE:https://lstep.app/XvXjl0q

PROFILE

稲野辺悠(夜の獣医師ゆってぃー)

港区動物救急医療センター芝アニマルクリニック院長
日本獣医救急集中治療学会所属

コラム一覧に戻る →