2025.08.30
犬のファロー四徴症
<原因>
ファロー四徴症(Tetralogy of Fallot, TOF)は、犬における先天的な心疾患のひとつで、心臓に4つの異常が同時に存在する状態を指します。この疾患は、右心室の圧力が高くなり、酸素不足の血液が体に流れ込むことによって、犬の健康に深刻な影響を与える可能性があります。ファロー四徴症は、通常、出生時に発症し、症状は数ヶ月内に現れることが多いです。
ファロー四徴症は、以下の4つの異常が組み合わさることによって発症します:
- 心室中隔欠損症(VSD) 心室中隔欠損症は、心臓の左右の心室を隔てる壁に穴が開いている状態です。この穴を通じて、右心室と左心室間で血液が異常に流れ込みます。これにより、酸素が少ない血液が左心室に流れ、体全体に送られます。
- 肺動脈狭窄(Pulmonary Stenosis) 肺動脈が狭くなることにより、右心室から肺への血液の流れが制限されます。これにより、右心室は過剰に働き、圧力が増加します。
- 大動脈の騎乗(Overriding Aorta) 通常、肺動脈から分かれる血管は右心室から血液を送り出しますが、ファロー四徴症の場合、大動脈が心室中隔の上に位置し、右心室と左心室両方から血液を受け取ります。これにより、酸素の少ない血液が全身に流れる原因となります。
- 右心室肥大(Right Ventricular Hypertrophy) 右心室は、肺動脈狭窄により血液を十分に送ることができないため、過剰に働き、肥大します。この肥大が進行すると、右心室の機能が低下し、さらに心臓に負担がかかります。
<症状>

ファロー四徴症の症状は、犬の年齢や疾患の進行具合によって異なりますが、以下のような症状が一般的です:
- 運動後の呼吸困難 活動後や運動後に呼吸が速くなる、または息切れを起こすことがあります。特に激しい運動を避ける必要があります。
- チアノーゼ(青紫色) 血液の酸素濃度が低下することで、犬の口周りや舌が青紫色になることがあります。これは酸素供給が不十分であることを示しています。
- 元気がなくなる 日常的に元気がなくなる、または疲れやすくなることがあります。特に若い犬の場合、この症状が顕著になることがあります。
- 食欲不振 酸素が不足している状態が続くと、食欲が減退することがあります。
- 心雑音 獣医による診察で心臓の音に異常がある場合があります。特に心室中隔欠損症や肺動脈狭窄があるため、特有の雑音が聞こえることが多いです。
<診断>

ファロー四徴症の診断には、次のような方法が使用されます:
- 聴診 獣医師が心臓の音を聞き、異常な音(心雑音)を確認します。これにより、ファロー四徴症が疑われます。
- 超音波検査(エコー) 心臓の構造や血流を観察するために、超音波検査(心エコー)が行われます。これにより、心室中隔欠損症や肺動脈狭窄、大動脈の騎乗など、疾患の詳細な状態がわかります。
- X線検査 胸部のX線を使用して、心臓の大きさや形状、肺への血流などを確認することができます。これにより、右心室の肥大や肺の異常が見つかることがあります。
- 血液ガス検査 血液中の酸素濃度を測定し、酸素不足の程度を確認することができます。
<治療法>

ファロー四徴症の治療は、症状の程度や進行具合によって異なりますが、主な治療法は以下の通りです:
- 外科手術 多くの場合、心室中隔欠損症を修復するための手術が推奨されます。これにより、血液の流れが正常化し、酸素供給が改善されます。
- 薬物療法 一部の犬では、心不全や高血圧の管理のために薬物療法が行われることがあります。これにより、症状を軽減し、犬の生活の質を改善します。
- 生活習慣の改善 激しい運動を避け、適切な体重を維持することが推奨されます。また、定期的な心臓検診が必要です。
<予後>
ファロー四徴症の予後は、治療のタイミングや症状の重さによって大きく異なります。早期に手術を受けた場合、犬の寿命は長く、通常の生活を送ることができることが多いですが、手術を行わなかった場合、進行する心不全や肺高血圧によって健康状態が悪化することがあります。定期的な健康管理と獣医師との連携が重要です。
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PROFILE
稲野辺悠(夜の獣医師ゆってぃー)
港区動物救急医療センター芝アニマルクリニック院長
日本獣医救急集中治療学会所属





