2025.08.28
犬の心室中隔欠損症
<原因>
心室中隔欠損症(VSD)は、犬の先天的な心疾患のひとつで、心臓の左右の心室を分ける壁(中隔)に穴が開いている状態を指します。この欠損により、心臓の血液循環が異常になり、通常、右心室から肺へ送られるべき血液が、左心室に流れ込むことになります。これが続くと、肺に過剰な血液が流れ、心不全や肺高血圧などの深刻な問題が生じる可能性があります。
VSDは主に出生時に発症し、犬の心臓の構造的な異常によって引き起こされます。以下に主な原因やリスク因子を挙げます:
- 遺伝的要因 心室中隔欠損症は遺伝的な要因が大きく関与することがあり、特定の犬種に多く見られます。特に、ブルドッグ、ボクサー、ダックスフント、シーズーなどで発症率が高いことが知られています。これらの犬種では、心臓の発育に異常が生じやすく、VSDが発症するリスクが高まります。
- 胎児の発育異常 胎児期における発育異常がVSDの原因となることがあります。妊娠中の母犬の栄養状態や健康状態が、胎児の心臓の正常な発育に影響を与える場合があります。また、感染症や薬剤の影響も原因になることがあります。
- 心臓の構造異常 心室中隔欠損症は、心室中隔の発育異常や中隔が正常に閉じないことで発症します。この欠損部分を通じて、右心室から左心室へ血液が流れ込むことが、心臓に過剰な負荷をかけ、最終的には心不全や肺の過剰な血流を引き起こします。
- 環境要因 特定の環境要因がVSDの発症を助長する場合もあります。例えば、妊娠中に母犬が特定の薬剤や有害物質に曝露されることが、胎児の心臓に影響を与えることがあります。また、犬の成長過程における栄養不足やストレスも、心臓の正常な発育に影響を与えることがあります。
<症状>

心室中隔欠損症の症状は、欠損の大きさや血液の流れに異常があるかどうかによって異なります。小さな欠損では無症状の場合もありますが、大きな欠損がある場合は、以下のような症状が現れることがあります:
- 呼吸困難 血液が肺に過剰に流れ込むことによって肺に負担がかかり、呼吸が困難になることがあります。呼吸が速くなり、喘鳴音(呼吸音)を伴うこともあります。
- 運動時の疲労 心臓の負担が大きくなるため、運動後に極端な疲労感や息切れを感じることがあります。活発に動いた後に犬が息を切らして休むことが多くなります。
- 食欲不振 血流異常によって体全体に十分な酸素が供給されなくなり、犬が食欲を失うことがあります。
- 成長遅延 乳犬や幼犬の場合、心室中隔欠損症による循環不全の影響で、体重の増加が遅れることがあります。
- 心雑音 VSDの典型的な兆候のひとつが心雑音です。心臓に流れ込む異常な血液の動きにより、獣医師が聴診で心雑音を確認することができます。
<診断>

VSDの診断は、獣医師による聴診に加えて、以下の検査が必要となることがあります:
- 聴診 心雑音が聴取されることが多く、VSDを疑う初期の手がかりとなります。
- エコー検査(心エコー) 心臓の詳細な画像を得るための検査で、VSDの位置や大きさを特定するために用いられます。
- X線検査 胸部X線を使って心臓の拡大具合や肺の状態を確認し、VSDによる影響を評価します。
- 心電図 心室中隔欠損症が引き起こす可能性のある不整脈を検出するために行われることがあります。
<治療法>

心室中隔欠損症の治療方法は、欠損の大きさや症状の進行度に応じて異なります:
- 薬物治療 血液の流れを改善し、心臓の負担を軽減するために、利尿剤やACE阻害薬、ベータブロッカーが使われることがあります。
- 手術 欠損が大きく、症状が重篤な場合、外科手術による修復が検討されることがあります。特に、大きな穴が開いている場合には、手術によって中隔を閉じることが目標となります。
- 管理と定期的なチェック 軽度のVSDの場合、症状が安定している限り、薬物での管理や定期的な心臓検診を行うことが多いです。
<予後>
心室中隔欠損症の予後は、欠損の大きさや治療の有無によって大きく異なります。小さい欠損の場合、適切な管理を行うことで犬はほとんど症状なく長生きすることができますが、大きな欠損がある場合、早期の発見と治療が非常に重要です。
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PROFILE
稲野辺悠(夜の獣医師ゆってぃー)
港区動物救急医療センター芝アニマルクリニック院長
日本獣医救急集中治療学会所属





