2025.08.26
犬の心房中隔欠損症
<原因>
心房中隔欠損症(ASD)は、犬の先天的な心疾患で、左右の心房を隔てる壁(心房中隔)に穴が開いている状態を指します。この欠損により、右心房と左心房の間で異常な血液の流れが生じ、正常な循環が妨げられます。心房中隔に穴があると、右心房から左心房へ血液が流れ込み、左心室や体全体に送られる血液の量が減少することがあります。この結果、右心房および右心室が過剰に働き、心不全や肺高血圧を引き起こすことがあります。
主に出生時に発症し、心房中隔に構造的な異常があることが原因です。以下に主な原因やリスク因子を挙げます:
- 遺伝的要因 心房中隔欠損症は遺伝的要因が関与していることがあり、特定の犬種で発症しやすい傾向があります。特に、ボクサー、シーズー、ダックスフント、アフガン・ハウンドなどの犬種では、心臓の発育異常によるASDのリスクが高くなります。
- 胎児期の発育異常 胎児期における発育異常がASDの発症に関与することがあります。妊娠中の母犬の健康状態や栄養状態、感染症などが影響を与える場合があります。また、特定の薬剤の使用が原因となることも考えられます。
- 心房中隔の発達異常 心房中隔は通常、胎児期に閉じますが、何らかの理由でその閉鎖が不完全な場合、心房中隔欠損症が発生します。この構造的な異常が、血液が本来流れるべき経路を妨げ、異常な循環を引き起こします。
- 環境要因 環境要因も心房中隔欠損症に関与する可能性があります。母犬が妊娠中に感染症にかかる、または特定の薬物に暴露されると、胎児の心臓の発育に影響を与えることがあります。これにより、心房中隔の発達に異常が生じることがあります。
<症状>

心房中隔欠損症の症状は、欠損の大きさや血液の流れに影響を与える程度によって異なります。以下に代表的な症状を挙げます:
- 呼吸困難
血液の流れが異常になることで、肺に過剰な血液が流れ込み、呼吸が浅くなる、または早くなることがあります。 - 運動不耐性
普通の運動をしても疲れやすくなることがあり、犬が活動的でなくなることがあります。 - 咳や呼吸音
肺高血圧や心不全の進行に伴い、咳が出たり、呼吸が荒くなったりすることがあります。 - 成長不良
幼犬においては、正常な成長が妨げられることがあり、体重の増加が遅れることがあります。 - チアノーゼ(青紫色の舌や歯茎)
血液循環が不完全な場合、酸素不足により舌や歯茎が青紫色になることがあります。
<診断>

心房中隔欠損症の診断には、獣医師による聴診や心臓の超音波検査(エコー)、胸部レントゲン、心電図(ECG)などが必要です。聴診で心雑音が確認されることが多く、エコーで欠損の大きさや血液の流れを確認することができます。
<治療>

心房中隔欠損症の治療は、欠損の大きさや症状の進行具合によって異なります。軽度な場合、治療が不要なこともありますが、重度な場合は手術が必要です。手術によって欠損部を修復することができ、症状の改善が期待されます。治療には外科的修復や、場合によってはカテーテル治療が選択されることがあります。
また、症状が軽度であれば、薬物療法や生活習慣の改善(過度の運動を避けるなど)が推奨される場合があります。
<予後>
心房中隔欠損症の予後は、欠損の大きさや治療の早さによって異なります。早期に治療を行うことで、犬の寿命や生活の質を大きく改善することができますが、治療が遅れると、心不全や肺高血圧などの合併症が進行する可能性があります。
犬の心房中隔欠損症は、早期発見と適切な治療により管理が可能な疾患です。定期的な健康診断や獣医師による心臓の検査が重要です。
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PROFILE
稲野辺悠(夜の獣医師ゆってぃー)
港区動物救急医療センター芝アニマルクリニック院長
日本獣医救急集中治療学会所属





