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コラム

2025.09.10

犬の肺動脈狭窄症

<原因>

肺動脈狭窄症(Pulmonic Stenosis)は、肺動脈が異常に狭くなることによって心臓に負担がかかる先天的な心疾患です。狭窄によって、右心室から肺へ血液を送るための圧力が増加し、心不全を引き起こすことがあります。犬の肺動脈狭窄症は通常、出生時に発症し、急激に症状が進行することは少ないですが、無症状のまま進行する場合もあります。

主な原因とリスク因子には以下が含まれます:

  1. 遺伝的要因 肺動脈狭窄症は遺伝的な要因が関与しており、特定の犬種に多く見られます。特にボクサー、ビーグル、シー・ズー、ジャック・ラッセル・テリア、ブルドッグなどに多く発症します。これらの犬種は、肺動脈に異常が発生しやすいため、定期的な心臓検診が推奨されます。
  2. 肺動脈の構造異常 肺動脈狭窄症の原因となる主要な問題は、肺動脈の構造的異常です。肺動脈が正常な太さに発達せず、血液の流れが制限されます。これにより右心室が過剰に働き、最終的には心不全を引き起こす可能性があります。
  3. 心臓の発育異常 胎児期や生後早期に発生する心臓の発育異常が、肺動脈の狭窄を引き起こすことがあります。妊娠中の母犬の健康状態や栄養状態が影響を与える可能性があります。
  4. 環境要因 肺動脈狭窄症は主に遺伝的な要因によって引き起こされますが、過去に特定の薬剤や感染症により影響を受けた犬もいます。環境的な要因が発症を助長することがあるため、飼い主は犬の健康に十分注意を払う必要があります。

<症状>

肺動脈狭窄症は症状が軽度の場合もあれば、重度の場合には急激な悪化を見せることもあります。一般的な症状は以下の通りです:

  1. 運動不耐性 狭窄が進行すると、運動時に息切れや疲れやすさが見られます。犬が元気をなくし、遊んだり散歩したりすることを避けるようになります。
  2. 咳が発生することがあり、特に運動後や興奮した際に顕著になります。
  3. 失神 心臓への負担が増すと、失神を引き起こすことがあります。失神は急に発生することがあり、飼い主にとってはショックを受ける症状です。
  4. 呼吸困難 重度の場合、呼吸困難を引き起こすことがあります。胸部の圧力が高まり、肺に十分な血液が供給されなくなるため、呼吸が浅く、早くなります。
  5. 心音異常 獣医師が聴診を行うと、心雑音が聞こえることがあります。これが肺動脈狭窄症の特徴的なサインです。
  6. 成長遅延 若齢の犬では、適切な成長が遅れることがあります。成長過程での体重増加が遅く、全体的に元気がなくなることがあります。

<診断>

肺動脈狭窄症の診断には、以下の検査が用いられます:

  1. 聴診 獣医師が心臓の音を聴診し、異常な音(心雑音)が聞こえることがあります。これは肺動脈狭窄症を示唆する重要なサインです。
  2. 超音波検査(エコー) 超音波検査を使用して、肺動脈の狭窄の程度を確認します。これにより、血液の流れや右心室の状態を視覚的に評価できます。
  3. X線検査 X線で心臓の拡大具合や肺の状態を確認します。肺動脈狭窄症が進行すると、心臓が肥大することがあります。
  4. 心電図(ECG) 心電図で、心拍の異常や不整脈があるかを確認します。

<治療>

肺動脈狭窄症の治療は、症状の重症度に応じて異なります。以下の治療法が一般的です:

  1. 薬物療法 血圧を下げる薬や心臓の負担を軽減する薬が処方されることがあります。これにより、症状の進行を遅らせることができます。
  2. 手術 狭窄が重度である場合、手術が必要になることがあります。外科的に肺動脈の狭窄部分を広げる方法が選択されることがあります。
  3. バルーン膨張術 バルーン膨張術は、狭窄部位をバルーンで拡張する治療法です。この方法は、手術に比べて侵襲が少なく、一般的に良好な結果が得られます。

<予防>

肺動脈狭窄症の予防は完全には不可能ですが、遺伝的なリスクが高い犬種では、早期の診断と定期的な健康チェックが重要です。遺伝的要因に関連するため、繁殖に関しても慎重な選択が求められます。また、犬の健康状態を日常的に観察し、早期に異常があれば獣医師に相談することが推奨されます。

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PROFILE

稲野辺悠(夜の獣医師ゆってぃー)

港区動物救急医療センター芝アニマルクリニック院長
日本獣医救急集中治療学会所属

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