2025.04.23
犬猫の喉頭麻痺
<原因>

喉頭麻痺(こうとうまひ)は、喉頭の筋肉や神経に異常が生じ、声帯や喉頭の開閉機能が低下する病気です。声帯の動きが鈍くなり、気道が十分に開かれなくなるため、呼吸が困難になることがあります。この疾患は、犬や猫に見られることがあり、特に中高齢の犬に多く発症します。
主な原因としては以下のようなものがあります:
- 遺伝的要因
一部の犬種(特に大きな犬や中型犬)は遺伝的に喉頭麻痺を発症しやすい傾向があります。ボクサー、グレート・デーン、ゴールデン・レトリーバーなどが影響を受けやすい犬種とされています。 - 加齢
老化に伴い、喉頭の筋肉や神経の機能が低下することで、喉頭麻痺が発症することがあります。 - 外傷や手術
喉頭や首周りに外的な衝撃や手術が加わることで、喉頭の神経や筋肉に損傷が生じ、麻痺が引き起こされることがあります。 - 神経疾患
喉頭麻痺は、神経疾患(例:多発性神経障害や脳の障害)によっても引き起こされることがあります。これにより、喉頭の神経信号が正常に伝達されなくなります。 - 甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンの不足は神経や筋肉の機能に影響を与え、喉頭麻痺の発症を引き起こすことがあります。 - 肥満
肥満は喉頭への圧力を高め、呼吸困難を引き起こす原因となる場合があります。体重過多によって気道が狭くなり、喉頭麻痺を悪化させることがあります。
<症状>
喉頭麻痺の症状は、発症の程度や進行度により異なります。主な症状として以下が挙げられます:
- 呼吸困難
喉頭の機能が低下すると、気道の開閉が不十分になり、呼吸がしづらくなります。特に運動後や興奮時に症状が悪化することがあります。 - 喘鳴(ぜんめい)
喉頭が正常に開かないため、呼吸時に「ヒューヒュー」や「ゼーゼー」といった音がすることがあります。 - 過呼吸
呼吸が速くなったり、息切れが見られることがあります。特に身体的な活動後に顕著になります。 - 食欲不振
呼吸が困難になるため、食事中や飲水時にストレスを感じることがあり、食欲が減少することがあります。 - 青紫色の舌
酸素不足により、舌や歯茎が青紫色になることがあります。これはチアノーゼと呼ばれ、呼吸困難が進行している証拠です。 - 発作的な咳
喉頭麻痺が悪化すると、咳を頻繁にすることがあります。特に興奮したり、温度が急激に変化する環境で咳が出ることがあります。
<診断>

喉頭麻痺の診断は、動物の症状や病歴に基づいて行われます。以下の方法で診断が行われます:
- 問診と身体検査
飼い主から詳細な病歴を聞き、呼吸や運動時の異常を確認します。また、身体検査を通じて、呼吸音や動物の状態を評価します。 - 喉頭内視鏡検査
喉頭内視鏡を使用して、喉頭の状態を直接観察し、声帯や喉頭の動きが正常かどうかを確認します。麻痺が見られる場合、声帯が正常に開かないことが確認できます。 - X線検査(胸部レントゲン)
胸部のX線検査により、気管や肺の異常を確認し、喉頭麻痺の影響を受けた呼吸器系の状態を評価します。 - 喉頭圧迫テスト
喉頭を軽く圧迫してみて、気道がどの程度開くかを確認する検査です。圧迫によって気道が閉じるようであれば、喉頭麻痺の可能性があります。 - 血液検査
甲状腺機能低下症やその他の内分泌疾患が原因であるかを確認するために血液検査が行われることがあります。
<治療>

喉頭麻痺の治療は、症状の重さや原因によって異なります。以下の治療方法が用いられます:
- 薬物療法
- 鎮静薬: 呼吸困難を和らげるために、鎮静薬が使用されることがあります。
- 抗炎症薬: 喉頭や気道の炎症を抑えるために、ステロイド薬が使われることがあります。
- 甲状腺ホルモン補充: 甲状腺機能低下症が原因であれば、ホルモン補充療法が行われます。
- 体重管理
肥満が喉頭麻痺を悪化させるため、体重管理が非常に重要です。適切な食事と運動を通じて健康体重を維持します。 - 手術
手術が必要な場合、喉頭を安定させるための手術(例:喉頭固定術)が行われることがあります。これにより、喉頭の開閉機能を補助し、呼吸困難を改善します。 - 酸素療法
酸素補充療法を行い、酸素不足による症状を改善することがあります。特に発作時に有効です。
<予防策>
喉頭麻痺を完全に予防することは難しいですが、以下の方法でリスクを減らすことができます:
- 適切な体重管理
肥満を防ぎ、健康的な体重を維持することが喉頭麻痺の予防に繋がります。 - 遺伝的リスクの認識
喉頭麻痺を発症しやすい犬種に対しては、飼い主が早期に症状を確認し、定期的な健康診断を受けることが重要です。 - 環境管理
喉頭への過度の負担を避けるため、喉に負担のかかる過剰な運動や過酷な環境を避けるようにしましょう。 - 早期の診断と治療
喉頭麻痺の兆候が見られた場合、早期に診断を受け、適切な治療を行うことで進行を防ぐことができます。
喉頭麻痺は適切な治療と管理により症状を軽減することが可能ですが、早期の発見が重要です。呼吸に異常が見られる場合は、獣医師に早めに相談しましょう。
お困りのことが御座いましたら、お気軽にご相談ください。
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PROFILE

稲野辺悠(夜の獣医師ゆってぃー)
港区動物救急医療センター芝アニマルクリニック院長
日本獣医救急集中治療学会所属