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コラム

2025.05.01

犬猫の肺気腫

<原因>

肺気腫は、肺の肺胞が破壊され、呼吸機能が低下する慢性的な疾患です。犬や猫でも、特に高齢の動物で見られることがあり、慢性の呼吸困難を引き起こします。

主な原因として以下が挙げられます:

  1. 慢性気道疾患
    長期間の気管炎や気管支炎など、慢性的な炎症が肺胞を損傷します。
  2. 慢性的な刺激
    タバコの煙、ホコリ、化学物質などの吸入により肺組織が損傷します。
  3. 感染症
    長引く肺炎や気管支感染症が肺組織に影響を及ぼすことがあります。
  4. 先天的要因
    一部の動物では、肺胞や気道の構造異常が原因となる場合があります。
  5. 酸化ストレス
    活性酸素による肺組織の損傷が進行に関与すると考えられています。

<症状>

肺気腫の症状は、徐々に進行し、運動やストレスで悪化する傾向があります。主な症状は以下のとおりです:

  1. 呼吸困難
    特に呼気時に苦しそうな様子を示します(呼吸が遅く長くなる)。

  2. 持続的な乾いた咳が特徴的です。
  3. 運動不耐性
    少しの運動でも疲れやすく、活動を嫌がるようになります。
  4. 体重減少
    慢性的なエネルギー消費と食欲低下によるものです。
  5. 胸郭の拡張
    肺に空気が過剰に溜まることで、胸郭が膨らんだように見えることがあります。
  6. チアノーゼ
    酸素不足による舌や歯茎の青紫色変化が見られる場合があります。

<診断>

  1. 問診と身体検査
    症状の持続期間、生活環境、既往歴を詳しく聞き取り、呼吸音の聴診を行います。
  2. 胸部X線検査
    肺の過膨張、肺野の透過性増加(明るく映る)、横隔膜の平坦化を確認します。
  3. CT検査
    肺組織の詳細な構造を確認し、肺気腫の程度を評価します。
  4. 血液ガス分析
    酸素と二酸化炭素のレベルを測定し、肺機能の低下を評価します。
  5. 気道洗浄液の分析(BAL)
    感染や炎症の有無を確認し、慢性炎症性疾患との鑑別を行います。

<治療>

肺気腫の治療は、進行を遅らせ、症状を管理することが主な目的です。

  1. 環境管理
    • タバコの煙や化学物質などの刺激物を避ける。
    • 適切な温度・湿度を保つ。
  2. 薬物療法
    • 気管支拡張薬: 気道を広げ、呼吸を楽にします。
    • 抗炎症薬: ステロイドなどで気道の炎症を軽減します。
    • 抗生物質: 二次感染を防ぐために使用します。
  3. 酸素療法
    酸素濃縮器や酸素テントを使用し、酸素不足を補います。
  4. リハビリテーション
    軽い運動を取り入れ、肺活量や体力を維持します。
  5. 栄養管理
    高カロリーの食事を提供し、体重減少を防ぎます。
  6. 外科的治療(稀)
    一部の肺胞が特に大きく膨らんでいる場合、外科的に切除することがあります。

<予防策>

  1. 生活環境の改善
    タバコの煙やホコリ、刺激物を動物の生活環境から排除します。
  2. 定期的な健康診断
    慢性の気道炎症や初期症状を早期に発見し、適切に治療します。
  3. 適切な体重管理
    肥満は呼吸器系への負担を増加させるため、適正体重を維持します。
  4. ワクチン接種
    感染症による肺炎や気管支炎を予防します。
  5. ストレス軽減
    無理な運動や急激な環境変化を避け、安定した生活を提供します。

肺気腫は進行性の疾患であり、治癒することは困難ですが、適切な管理と治療により動物の生活の質を向上させることが可能です。呼吸が苦しそうな場合や運動を嫌がる場合は、早めに獣医師に相談してください。

お困りのことが御座いましたら、お気軽にご相談ください。

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PROFILE

稲野辺悠(夜の獣医師ゆってぃー)

港区動物救急医療センター芝アニマルクリニック院長
日本獣医救急集中治療学会所属

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