2025.02.05
犬猫の肺水腫を救急獣医師が解説
夜間の急変時に
<原因>
肺水腫は、肺胞や肺組織に過剰な液体が貯留する状態を指します。犬や猫においても深刻な呼吸困難を引き起こす原因となります。原因は大きく2つに分けられます。
- 心原性肺水腫
心臓の異常によって血液が肺の毛細血管に滞留し、液体が漏れ出すことにより発生します。- 僧帽弁閉鎖不全症
- 心筋症(拡張型や肥大型)
- 高血圧
- 非心原性肺水腫
心臓疾患以外の要因で肺の血管から液体が漏れ出すことで起こります。- 急性肺損傷: 外傷や吸入障害(煙や毒性ガス)。
- 感染症: 重度の肺炎や敗血症。
- 低タンパク血症: 血液中のタンパク質不足による血管透過性の増加。
- 神経性肺水腫: 頭部外傷や中枢神経系の疾患によるもの。
<症状>
肺水腫の症状は突然発生し、迅速な対応が必要です。
- 呼吸困難
開口呼吸や速い呼吸(頻呼吸)が見られます。 - 咳
湿った咳、血性または泡状の液体を伴う咳が特徴です。 - チアノーゼ
酸素不足により、歯茎や舌が青紫色になります。 - 疲れやすさと虚弱
体力の低下により動きが鈍くなります。 - 鼻水
血性または泡状の鼻水が見られる場合があります。 - 意識障害
重度の酸素不足により、意識がもうろうとすることがあります。
<診断>
- 問診と身体検査
症状や既往歴を確認します。特に心臓疾患の既往歴がある場合には、心原性肺水腫を疑います。 - 胸部X線検査
肺の陰影増加(特に肺門部)が見られ、液体の貯留を確認します。 - 超音波検査(心エコー)
心原性肺水腫の診断に有用で、心臓の機能を評価します。 - 血液検査
炎症マーカー、低タンパク血症、または酸素飽和度を確認します。 - 動脈血ガス分析
酸素と二酸化炭素のレベルを測定し、呼吸状態を評価します。 - 血圧測定
高血圧が心原性肺水腫の原因となることがあるため、血圧を確認します。
<治療>
- 酸素療法
酸素テントや鼻カニューレを用いて酸素供給を行い、酸素不足を補います。 - 薬物療法
- 利尿薬: フロセミド などを用いて体内の余分な液体を排出します。
- 血管拡張薬: 心原性肺水腫の治療に使用し、心臓への負担を軽減します。
- 強心薬: 心臓の収縮力を改善するために投与されます。
- 抗炎症薬: 非心原性肺水腫の場合、炎症を抑える目的で使用されることがあります。
- 安静
ストレスを避け、動物をできるだけ安静な状態に保ちます。 - 原因療法
- 心原性肺水腫: 心臓疾患の管理(例:僧帽弁手術や心筋症治療)。
- 非心原性肺水腫: 感染症や低タンパク血症の治療。
- 緊急処置
重度の場合、気管挿管や人工呼吸が必要となる場合があります。
<予防策>
- 基礎疾患の管理
心臓疾患がある場合、定期的な診察と治療を行い、早期に管理します。 - 適切な体重管理
肥満は心臓への負担を増加させるため、健康体重を維持します。 - 感染予防
ワクチン接種や適切な衛生管理により、肺炎や感染症を予防します。 - 事故防止
吸引性肺水腫を防ぐため、異物や毒性物質を避けるよう環境を整えます。 - ストレス軽減
過度な運動や興奮を避け、安定した生活環境を提供します。
肺水腫は迅速な診断と治療が必要な緊急疾患です。呼吸が苦しそうな場合や咳、虚弱などの症状が見られた場合は、速やかに動物病院を受診してください。
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PROFILE
稲野辺悠(夜の獣医師ゆってぃー)
港区動物救急医療センター芝アニマルクリニック院長
日本獣医救急集中治療学会所属