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コラム

2025.08.01

犬猫の肺高血圧症

<原因>

肺高血圧症(PH)は、犬の肺の血管に異常な圧力がかかる病状で、通常は肺動脈やその枝における血圧の上昇を指します。肺高血圧症が発症すると、右心室に過剰な負担がかかり、最終的には心不全や呼吸困難などの症状が現れます。肺高血圧症は、先天的または後天的な原因により引き起こされることがあり、早期に治療を開始しないと、深刻な心臓や肺の問題に発展する可能性があります。

肺高血圧症の主な原因には以下のようなものがあります:

  1. 左心疾患(左心不全) 左心室や左心房の疾患、例えば僧帽弁閉鎖不全や大動脈弁狭窄症などが原因で、左心室から肺へ送られる血液の流れに障害が生じると、肺高血圧症を引き起こすことがあります。左心疾患による肺高血圧症は、肺の血管に圧力をかけて高血圧を引き起こします。
  2. 慢性的な肺疾患 慢性的な肺疾患(例:慢性気管支炎や肺炎など)は、肺の血管に異常な圧力をかけ、肺高血圧症を引き起こすことがあります。肺の炎症や損傷が進行することで、肺血管が狭窄し、圧力が上昇します。
  3. 血栓性疾患 肺血管に血栓が形成されることによって、血液の流れが阻害され、肺高血圧症が発症することがあります。肺塞栓症(肺動脈に血栓が詰まる状態)などが原因となります。
  4. 犬の肺動脈高血圧症(特発性肺高血圧症) 特発性肺高血圧症は、原因が不明な場合に発症します。この場合、特に明確な心臓疾患や肺疾患がなくても、肺動脈に圧力がかかり、高血圧が生じます。高齢の犬や遺伝的要因が関与していることもあります。
  5. 寄生虫(犬糸状虫症) 犬糸状虫(フィラリア)が肺動脈に寄生することで、肺動脈に炎症が生じ、高血圧症が発生することがあります。犬糸状虫症は、特に熱帯地域や湿度の高い地域で問題となることがあります。
  6. 先天的心疾患 先天的に心臓に異常がある場合、特に心房中隔欠損症(ASD)や心室中隔欠損症(VSD)などの疾患が肺高血圧症を引き起こすことがあります。これらの疾患により、異常な血流が肺にかかり、肺高血圧を誘発します。

<症状>

肺高血圧症の症状は、疾患の進行具合や原因によって異なりますが、一般的な症状には以下が含まれます:

  1. 呼吸困難 呼吸が浅く、速くなることがあり、犬が息切れを示すことがあります。軽度から重度まで様々な呼吸障害が見られます。
  2. 疲れやすさ 活動後に異常な疲労感を示し、長時間の運動や歩行を避けることがあります。
  3. 慢性的な咳や、呼吸器系の問題を伴う咳が見られることがあります。特に運動後に咳がひどくなることがあります。
  4. 失神やふらつき 血圧の異常や血流の障害により、失神やふらつきが見られることがあります。これは特に激しい運動やストレス時に起こりやすいです。
  5. 口唇や舌の青紫(チアノーゼ) 酸素が不足するため、舌や歯茎、口唇が青紫色になることがあります。この症状は、肺高血圧症が進行した結果として現れることがあります。

<診断>

肺高血圧症の診断は、詳細な医療検査を通じて行われます。獣医師は以下の方法を使用して診断を確定します:

  1. 聴診 呼吸音や心音を聴診器で確認し、異常な音(例えば、心雑音や肺の異常音)があるかを調べます。
  2. 胸部レントゲン検査 肺や心臓の状態を可視化するためにレントゲンを撮影します。肺高血圧症が進行している場合、心臓や肺血管の形状に異常が見られることがあります。
  3. 心臓超音波(エコー)検査 心臓の構造や動きを詳しく観察し、肺高血圧の原因が心臓にある場合は、エコー検査を通じて詳細な情報を得ることができます。
  4. 血液検査 血液中の酸素濃度やその他の重要な指標を測定し、肺高血圧症が引き起こしている生理的な変化を評価します。
  5. 心臓カテーテル検査 より精密な検査が必要な場合には、心臓カテーテルを使って血圧を直接測定し、肺動脈の圧力の上昇を確認することがあります。

<治療>

肺高血圧症の治療は、その原因や症状の重篤度に応じて異なります。一般的な治療法には以下が含まれます:

  1. 薬物治療
    • 血管拡張薬(例えば、シルデナフィル)は、肺の血管を拡張し、血流を改善するために使用されます。
    • 利尿薬は、過剰な体液を排除するために使用され、心臓や肺への負担を軽減します。
    • 抗血栓薬は、血栓の形成を防ぎ、血液の流れを改善するために使われます。
  2. 酸素療法 酸素が不足している犬には、酸素療法を施すことで呼吸をサポートします。
  3. 外科手術 血管の異常や血栓が原因の場合、外科手術が必要となることがあります。また、寄生虫による肺高血圧症では、寄生虫を取り除くための治療が行われます。

<予防>

肺高血圧症を完全に予防する方法はありませんが、原因となる疾患の早期発見と治療が重要です。特に、心臓疾患や肺疾患を早期に発見し、適切な治療を行うことで、肺高血圧症の発症リスクを低減させることができます。また、寄生虫予防を行うことも、肺高血圧症の発症を防ぐために有効です。

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PROFILE

稲野辺悠(夜の獣医師ゆってぃー)

港区動物救急医療センター芝アニマルクリニック院長
日本獣医救急集中治療学会所属

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