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コラム

2025.03.02

肺炎

<原因>

肺炎は肺の組織や肺胞に炎症が生じる疾患で、犬や猫などの動物でも一般的に見られます。原因は多岐にわたり、以下のように分類されます。

  1. 感染症
    • 細菌感染: Bordetella bronchiseptica, Streptococcus spp., Staphylococcus spp. などが一般的な原因菌です。
    • ウイルス感染: 犬ジステンパーウイルスや猫カリシウイルスが関連することがあります。
    • 真菌感染: 特に免疫抑制状態の動物で見られます(例:Aspergillus spp.)。
  2. 吸引性肺炎
    嘔吐物や液体、異物の吸引により、肺が炎症を起こすことがあります。
  3. 寄生虫感染
    肺虫(例:Aelurostrongylus abstrusus)が原因で肺炎を引き起こすことがあります。
  4. アレルギー性肺炎
    アレルギー反応によって引き起こされることがあります。
  5. 免疫疾患
    自己免疫疾患や免疫抑制状態が肺炎の誘因となる場合があります。
  6. 二次性肺炎
    他の疾患(例:気管支炎、腫瘍、心不全)に関連して発症することがあります。

<症状>

肺炎の症状は、原因や炎症の範囲、進行度によって異なります。

  1. 呼吸困難
    浅く速い呼吸、または呼吸時の努力が見られます。

  2. 乾いた咳、または痰を伴う湿った咳が特徴的です。
  3. 発熱
    特に感染性肺炎では体温の上昇が一般的です。
  4. 食欲不振と元気消失
    全身状態の悪化に伴い、食欲や活動性が低下します。
  5. チアノーゼ
    酸素不足による歯茎や舌の青紫色の変化が見られることがあります。
  6. 鼻水
    特にウイルス性肺炎では、粘液性または膿性の鼻水が観察されます。
  7. 体重減少
    慢性肺炎では栄養不良や筋力低下が起こる場合があります。

<診断>

  1. 問診と身体検査
    症状の経過や環境要因、既往歴を確認します。聴診器で肺音(ラ音やクラックル音)を評価します。
  2. 画像診断
    • 胸部X線検査: 肺炎の広がりや陰影の有無を確認します。
    • CT検査: より詳細な肺の状態を評価します。
  3. 血液検査
    炎症マーカー(白血球数の増加やCRP値の上昇)を確認します。
  4. 気管支洗浄液(BAL)の検査
    気管支内視鏡を使用して採取し、感染の原因菌や異物の有無を調べます。
  5. 微生物学的検査
    細菌や真菌、寄生虫の特定のため、培養検査やPCRを行います。
  6. 酸素飽和度測定
    動物の血液中の酸素レベルを評価し、酸素不足の有無を確認します。

<治療>

  1. 薬物療法
    • 抗生物質: 細菌感染が原因の場合に使用されます。広域抗生物質から開始し、培養結果に基づいて変更します。
    • 抗真菌薬: 真菌感染が原因の場合に適用されます。
    • 寄生虫駆除薬: 寄生虫感染の場合に必要です。
    • 抗炎症薬: アレルギー性肺炎や免疫疾患に使用されることがあります。
  2. 酸素療法
    呼吸困難がある場合、酸素テントや鼻カニューレを用いて酸素供給を行います。
  3. ネブライザー療法
    気道内の分泌物を除去し、炎症を軽減するために薬剤を吸入させます。
  4. 栄養管理
    消化しやすい高栄養食を提供し、体力回復をサポートします。
  5. 外科的処置
    吸引性肺炎の場合や異物が原因の場合、手術が必要になることがあります。

<予防策>

  1. 定期的なワクチン接種
    犬ジステンパーや猫カリシウイルスなどの感染症を防ぐために、定期的な予防接種を行います。
  2. 誤飲・誤吸の防止
    嘔吐物や異物が肺に入らないよう、適切な食事管理や監督を徹底します。
  3. 感染環境の管理
    多頭飼育環境では換気や衛生管理を徹底し、感染のリスクを減らします。
  4. 寄生虫予防
    定期的なフィラリア予防薬や駆虫薬の投与を行います。
  5. 健康管理
    定期的な健康診断により早期の異常発見を心がけます。

肺炎は早期診断と適切な治療が重要で、治療の遅れが動物の命に関わることがあります。異常を感じた場合は、速やかに獣医師に相談することが重要です。

お困りのことが御座いましたら、お気軽にご相談ください。

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PROFILE

稲野辺悠(夜の獣医師ゆってぃー)

港区動物救急医療センター芝アニマルクリニック院長
日本獣医救急集中治療学会所属

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